「スペンド・シフト」:自分サイズの経済活動を

イケダハヤト氏が薦める「スペンド・シフト」という本を読んだ。この本を読んでイケダハヤト氏がめざす方向性が垣間見えた気がした。

この本の中では特にデトロイトデトロイトを活性化させようとする食堂の人々の話に感銘を受けた。デトロイト言えば、産業化社会の輝かしい象徴であり、そして今は落ちぶれた工業都市としての象徴でもある。多くの人が逃げ出す廃墟の町で夢を持って町を活性化させようとする人々が居るのだ。

彼らは、デトロイトの悪い面ではなく、良い面に注目し、ビジネスを活性化させようと考えている。例えば、インフラが整っていることや家賃が安いことなど。多くの人々がグローバル化や不況に文句を言っている間に、何か自分に出来ることを探し、夢を持っている人が居るというを気づかされた。

世間ではグローバル化や不況等と騒いでいるが、この本を見ていて思ったのは、実は今まで(私を含めて)我々は何か過去の栄光を取り戻したいと考えるあまり間違った方向に進んでいるのではないかとということだ。デトロイトで言えば、つい我々はかつての自動車産業が盛んな時代のデトロイトを取り戻すことを夢見てしまう。しかしながら、デトロイトの復活は過去の栄光とは全く異なる形になるのではないかということだ。

我々はつい過去の栄光(自動車産業の発展など)を取り戻すために過去の成功の延長線上に次の成功があるかのように錯覚する。しかし、この本を読んで感じたのは、グローバル化や過去の産業主義的な成功の形とは全くことなる形態の成功を目指さなくてはならないのではないかと感じた。大資本が物を言う開発、でかい仕事、豪華ヨット、成金な豪邸など、それらを含めた過去の成功のイメージを払拭しなくてはならないと感じた。

この不況のデトロイトという町を全く違った観点で見るということだ。それはまるで、海を上から見たのと下から見たのでは、同じ海でも全く景色が異なることと似ている。海の上は荒れていても、海の底は静かで豊かな海洋資源が眠っているかも知れないのだ。

不況だ不況だと騒いでいても、そこに人が住んでいる限り、何かビジネスを始められるはずだ。まるで、未開の地を耕すような心構えが必要だ。その点では東京でだって何か出来るに違いない。そもそも日本人は戦後の焼け野原から立ち上がったのだから、その心意気でやれば、何でも出来るはず。ただ見方を変えなくてはならないのだ。

私自身も何か今まで大企業のあり方に自分を合わせようとし、過去の企業の姿をモデルになにかしようとしていたかも知れない。グローバル化に対抗しようと必死に抵抗していたのかもしれない。企業の担当者に雇ってもらうように英語を勉強したり、ITを学んだりしようとしていた。

私の今の仕事はIT系の仕事をしているので、IT技術の延長線上に未来の仕事を考えていた。しかし、私の場合はあまりITは得意ではない。だから無理をしてウェブを学んだり、プログラミング言語を学ぶのは私らしくないことに気づいた。(それでも多少は勉強するけどね)

私が得意なのは乗り物系のスポーツだ。以前は誰かに雇ってもらってスポーツしたら幸せだろうなと考えていた。しかしこの本を読んでから、小さくてもいいから自分の得意なものを生かして小さなビジネスをしようと考え始めた。

今のところ、二つぐらい実現可能なビジネスを考えている。今はハンググライダーパイロットになる練習をしているので、いつかはタンデム(二人乗り)の資格を取って人々に空の冒険を体験させるビジネスをしたいと思う。それから、もう一つはクルーザーを借りてクルージングのビジネスをすることだ。子供たちを手伝わせてもいいし。この二つならば、私に手の届く範囲で一人でも始められるビジネスだ。しかも、私は操縦するのが好きなので、嫌にならずに続けられる。

自分の能力を活かせれば、それが一番いい。誰にも奪われないし、誰かも査定されないからだ。雇われるために必死で努力するのは疲れるだけだ。誰にも奪われない能力を行使して、それでビジネスを始めるのだ。それを少しずつ広げていけばいいと思う。