アウトドアスポーツの問題点3 競技志向からレジャー志向へ

 日本のスポーツは元々競技を目指して作られてきた。だから、勝ち負けにこだわり、そのためのスポ根が流行ったのだと思う。だが、時代が変わって、スポ根が流行らなくなった。時代が変わったのに関係者の意識は変わらずに、相変わらずスポ根を続けてきた。

 競技志向でスポーツ業界が作られてきたため、有名選手や大会で記録を残した選手のみが祭り上げられるという体質ができた。有名選手などを売りにスポーツ事業が行なわれてきたが、必ずしも運営がうまく行ってきたとは言いがたい。競技での一流選手が必ずしも指導や運営で一流とは言えないからだ。中には、天から競技能力と指導力という二物を与えられた選手もいるが、それは稀であり、一般の選手にそれを求めるは筋違いである。

 しかしながら、スポーツ業界では、一流選手が教えれば、一流に成れると信じている人が多い。このことはスポーツ業界に限ったことではなく、大学教授や研究者の世界も同じである。皆、ノーベル賞受賞者をもてはやすが、必ずしも一流の学者が一流の教師とは限らない。

 スポーツ業界の人々は、スポーツをやる際に道具を購入してプレーするのが当たり前だと思っている。自分たちが競技大会のために新しい道具をそろえて、大会に臨むのが当たり前だったので、初心者に対しても同じように道具をそろえることを要求してしまうのである。果たして、その要求は妥当だろうか。お試しでやりたい顧客が何万、何十万円もやり続けるかどうかわからないスポーツにお金を出すだろうか。顧客には他にもいろいろな遊ぶ方法があるのにそんなにお金を出せるだろうか。子供だったら、成長に合わせて、ウェアも頻繁に買い換えなければならない。それを賄うには、余程のモチベーションが必要であろう。

 スポーツ業界は競技志向になっているので、業界に残るには、大会で良い成績を残さなければならないという雰囲気が漂っている。実際、フォーミュラカーのドライバーになるためには、より良い成績を残さなければ、サポートも受けられず、全て自費で賄わなければならないので、レースで優勝し続けなければ、ドライバーとして続けていくことは難しいようだ。

 私は先日、長野スパイラルで、ボブスレー、リュージュ、スケレトンの体験をしてきた。その体験は素晴らしいものだった。しかしながら、それらのウィンタースポーツ業界の運営は危機に陥っているようだ。長野スパイラルの運営は資金不足で、オリンピックでメダルを取れなければ、長野スパイラルを閉鎖せざるを得ない状況にあるらしい。そのプレッシャーがあってか、連盟の人達は、若い人たち、特に子供がリュージュなどをやってほしいという感じであった。私のようなピークを過ぎた大人はやってもやらなくてもどちらでもいいという雰囲気だった。ソリというウィンタースポーツ人口が激減していて、競技者の裾野を広げなくてはならないのに、さらに門戸を閉ざしてどうするのか。メダル重視という政府の政策がこの業界の関係者に歪みを引き起こさせていると感じた。

 とにかく、競技志向がもたらす弊害は枚挙にいとまが無い。競技志向、ヒーロー志向から現在のスポーツ業界ができたのは、事実ではあるが、これからレジャーなどの多様な志向性を目指して運営していく必要があると思う。


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