大河が文明を作る

 先日、元大学教授から私の住んでいる町の地質の説明を聞いたところ、私の住んでいる町は平らな所に作られた町だと思っていたが、実は平らに見えていた町も実は起伏があることに初めて気がついた。トタン屋根のようにわずかに山と谷の部分があったのであった。谷の部分は昔の川が浸食した跡ということだった。今まで気がつかなかったが、そういう目で土地を見てみると、道は川の筋に従って作られていることに気がついた。人間は昔の川が作った地形など意識はしないが、その地形に従って道を作り、それに従って生活しているのであった。

 教科書によれば、文明が大河と関係あることは周知の事実であるが、私は自分の町の地形を見てから、文明と大河の関係に納得した。では、人間が大河を利用したのか。いや、そうではなく、大河が人間を利用したと考えたほうが正しいと思う。人間は地球の上で自分だけが偉いと思いがちであるが、実はそうではなく、我々の文明も大河によって運命づけられ、その大河に沿って人間が集まり、集落を作り、やがて町ができて、文明が生まれたのだ。我々は蟻のように大河の周りに集まって、大河のお陰で発展し、今の我々の文明が存在するのだと思う。

 中国には大河が二つあり、その一つにも揚子江文明があったのではないかと言われており、揚子江は何千年も中国の文明を支え続けてきた。中国では今、三峡ダムを造って揚子江の流れを堰き止めようとしている。それはまるで中国人自身が自らの文明の息の根を止めようしていると感じる。これからも、大河と人間社会の関係について看ていきたいと思う。